時は2025年。
スマホ全盛の時代に、まさか“新型フィルムカメラ”が登場するなんて誰が想像したでしょうか。
今やスマートフォンは一人一台が当たり前で、搭載カメラも毎年のようにアップデート。処理性能も夜景性能もあらかた完成しつつあり、ある意味「これ以上どこを伸ばすの?」と思うほどに高画質化が進んできています。
一方で、その真逆のムーブメントとして、古いコンデジやオールドフィルムによる“粗いけどエモい”写真が注目され、今の若い世代の間でちょっとしたブームに。スマホのキレイすぎる写真とはまた違う不完全さ、偶然性、質感をあえて楽しむ…そんな価値観が広がってきています。
そしてなんと、令和の今、完全なる“新製品”としてフィルムカメラまでも発売されてきているのです。
今回紹介する「Lomo MC-A 35mm Film Camera」もそのひとつ。
実機(デモ機)を触ってきたので、質感や操作感を含めてレビューしていきます。
※展示されていたのは発売前のデモ機のため一部製品版とは異なる仕様があるようです。
この時代にフィルムを作り続けている「Lomography」というブランド
今回のカメラを手掛けるのは、オーストリアにルーツを持つ「Lomography(ロモグラフィー)」というブランド。フィルム好きの人なら“Lomoのフィルム”という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
ロモグラフィーはずっとフィルム文化そのものを守り続けているメーカーで、今でも新作フィルムやフィルムカメラをコンスタントに展開しています。筆者としても「いつも面白いフィルムを出してくれるメーカー」という印象が強く、現行フィルムの選択肢を広げてくれる貴重な存在。
今回訪れた東京・神田の直営店「Lomography+」は、なんと世界で唯一のロモグラフィー直営店。世界中探しても日本にしか存在しないというのはなかなか驚きです。

おもちゃじゃない、“ちゃんとした”フィルムカメラ
今回登場した「Lomo MC-A」は、35mmフィルムを使用するクラシックなフォーマット。ですがその最初の印象は“おもちゃ”とは真逆でした。

まず手に持って驚いたのが本体の重さ。(バッテリーなしで332g)金属製のボディは見た目以上に良い意味でズッシリと重厚感があり、手にした瞬間に「これは本物だ」と思わせてくれる存在感があります。今までのトイカメラ系とはまったく異なる、まさに“カメラを持っている感”。

令和のこの時代にフィルムカメラと聞くと、どこか玩具っぽい気楽なモデルが多い印象でしたが、MC-Aはむしろ真逆。外観の質感も、細かな操作部も、所有欲をかなり刺激してくるタイプのプロダクトでした。

機能が豊富なので初心者でも楽しめる
このカメラ、見た目だけでなく“中身”も相当に本格的。
オートでサクッと撮れるプログラムモードはもちろん、絞り優先、そして完全マニュアル撮影まで対応。どこまで自分で調整できるかがちゃんと選べるので、最初はオートで楽しんで、慣れてきたら徐々にマニュアルへ…という自然なステップアップも可能です。

さらに、最近のカメラらしくオートフォーカス機能も搭載。しかもLiDAR方式という今っぽいアプローチで、スナップ中心の撮影なら迷いなくサッとシャッターが切れる実用性も備えています。
それでいて手巻き&手動巻き戻しという、フィルムならではの操作性がしっかり残されているのが面白く、どこかアナログな「撮ってる感」も同時に味わえる設計になっているのが印象的でした。


新開発の32mm f/2.8レンズが“写り”に期待
今回のMC-Aの中核にあるのが、新開発の 32mm f/2.8 マルチコートガラスレンズ。
いわゆるトイカメラ的な“味”に全部振ってしまうのではなく、ちゃんと描写性能にもこだわったレンズを採用している点が、このカメラの大きな価値になりそうだと感じました。

実際の作例を見ても、ただレトロなだけではないシャープさと発色が見て取れ、スナップとの相性がかなり良さそう。絞りを開いてボケを作ったり、あえて絞ってパンフォーカス気味に撮ったりと、表現の幅がちゃんとあるフィルムカメラという印象ですね。
ロモらしい遊び要素もちゃんと残してる
ロモグラフィーらしく、遊び機能も盛りだくさん。
多重露光、長時間露光、さらにSplitzer(フレームの一部を切り替えて重ね撮りできるやつ)まで用意されていて、ただ撮るだけじゃなく“表現そのものを楽しむ”というロモらしい楽しさも健在。

トイっぽさと本格感という、一見矛盾する要素がどちらも成立しているのは、MC-Aならではの面白いポイントだと感じました。


発売は12月末!まだ年内に間に合うかも!?
気になる価格は 69,880円(税込)。
この金額、実はかなり絶妙だと思っています。というのも、現在“新品で買える”フィルムカメラの選択肢は本当に限られていて、トイカメラを除くと価格帯がいきなり跳ね上がってしまうのが現状。
例えば昨年登場した 「PENTAX 17(こちらはハーフサイズ)」は実売で約88,000円前後。さらにとなると、「Rollei 35AF」でいきなり18万円台、「Leica M6」になると約100万円と、極端なラインナップしか残っていません。
今回同じタイミングで話題の KODAK Snapic A1 も魅力的なモデルですが(予想価格は18,500円前後)、質感や方向性を考えるとターゲットはやや異なる印象。そういう意味で、MC-Aはちょうど“本気で使える”ゾーンにすっぽり収まってくれているように感じます。

現在はロモグラフィー公式オンラインストアで予約受付中。
当初は「12月後半から順次発送」の予定でしたが、執筆時点ではブラック・シルバーともに2026年1月発送予定に変更されている模様。ただ、Lomography Japan公式Xでは「今ならまだクリスマス前に間に合うかも?」といった投稿も見かけたので、ひと足早く届く可能性もゼロではなさそうです。
もしクリスマスプレゼントでこれをもらったら…そりゃあ飛び上がって喜んじゃいますよね(笑)。
Lomo MC-A 35mm スペック表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| フィルム形式 | 35mm |
| レンズ | 新開発 5群5枚 32mm f/2.8 マルチコートガラスレンズ |
| 絞り | f/2.8 / 4 / 5.6 / 8 / 11 / 16 |
| シャッタースピード | オート:1/500〜20秒 / マニュアル:B、1/500〜1秒 |
| フォーカス | LiDAR AF / ゾーンフォーカス(0.4 / 0.8 / 1.5 / 3m / ∞) |
| ISO設定 | ISO12〜3200(DXコード+手動設定) |
| 露出モード | プログラムオート / 絞り優先AE / マニュアル |
| フラッシュ | 内蔵(オート / 先幕 / 後幕) + PC端子で外部フラッシュ対応 |
| 多重露光 | 対応(Splitzer付属) |
| 長時間露光 | 対応(バルブ撮影) |
| 巻き上げ・巻き戻し | どちらも手動(多重露光がしやすい設計) |
| セルフタイマー | 2 / 10 / 30秒 |
| 電源 | CR2電池1本(USB-C充電対応CR2充電池付属) |
| 撮影可能本数 | 約10本分(目安) |
| サイズ | 125.8 × 69.5 × 42 mm |
| 重量 | 約332g(バッテリー除く) |
| ボディ材質 | メタル |
| 価格 | 69,880円(税込) |
【まとめ】令和の今にフィルムカメラを新発売する意義
いま新品で買えるフィルムカメラというだけで、MC-Aはかなり貴重な存在です。それに加えて、質感、レンズ、機能、遊び方まで、ただのトイカメラではない“本格フィルムコンパクト”として成立しているのは、今の時代だからこそ価値があると感じました。
中古市場を漁る楽しさももちろんありますが、フィルムを“新品のカメラで始められる”という体験は、実はものすごく贅沢。
今回触ってみて、単なるフィルム復刻ではなく、“フィルムの未来”をしっかり見据えた一台だと強く感じました。
フィルムカメラを始め、たい!!


